梅村:高山の女性のとかね。
森山:あれは、最初からあんなもの撮りに行くつもりは無かったんだ。高山の町とか撮りに行こうと思って行ったら面白くないんだよ。ぜんぜん。困ったなぁと思ったら、泊まった旅館の女の子が出てきたんで、「ちょっと撮らせて」て撮って、ああもしかしてこっちがいいかもって思って。それでその女の子に友達誰か居ない?とか聞いて、それで芋づる式にいろんな人と(笑)。だからあれはもう、現場で困ってああいう風になっちゃった。
中馬:決してご自分からポートレートを撮ろうと思って撮られた…
森山:もんじゃない。
中馬:やはり、ポートレートというのは、森山さんの写真の中で苦手といいますかそんな感じなのですか?
森山:そうだねぇ。あんまり撮りたくないもんね。
中山:ポートレートはできれば撮りたくないんですか?
森山:特にね。積極的に自分の表現のありようとしては撮りたくない。なんか仕事ぽいものでさ、撮んなきゃいけない時は撮るけど。
中山:僕は結構ポートレートが好きで、なんか写真て凄く、ポートレートを撮る為に発展して来たのかなぁと思っているのですが。
森山:それはその通りだよ。さっき言ったように、ニエプスが、恋人を残したいという。
中山:そうですよね。はじめ風景とか撮ってたんですけど、人を撮ったとき、それを凄く感じたんですよね。写真って人を残すものなのかなぁって。
森山:うん。それは正しいよ。ただ面白いか?原則は僕もよく解るしそうとも思う。でも撮ってて面白いか(笑)?人の顔なんか(笑)。
中山:(笑)まぁ僕は好きですねぇ。
森山:まぁね、とても好きな女の子をね、ポートレートじゃなくて撮っておきたいと言うのはあるよね。俺はね、自分の子供とか撮っても上手く撮れたためしが無いのよ(笑)。
中山:(笑)
森山:子供がガキの頃、撮ったりしたんだけどさ。なんかみんな『たどん』※みたいになってんだよ。
※『炭団(たどん)』炭の粉を丸く固めた燃料。
梅村:(笑)それ面白いねぇ。奥さんの評判が悪かったりして(笑)。
森山:いや、カミさんとかが撮った方が上手いんだよ。
梅村:上手いんだ(笑)。
森山:やっぱり本当に可愛いって言うかね、自分の子供達を素直に撮るだろ。俺はダメなんだよね。
梅村・中山:ダメなんすかぁ(笑)。
森山:ダメなのよ。ほんとに。みんな『たどん』みたいに。だから俺は向いてない。それから、細江(英公)さんの結婚式の時、あの三島由紀夫さんとか来るじゃない。で「森山君、君撮っといてよ」て言われて撮るんだけどさ、後で見せたら怒られたね(笑)。「君は僕の所で何を勉強してるのだね」って(笑)。記念写真になってないじゃないって。だから俺、向いてなんだよ。
中山:へぇ〜、それはどうしてですかねぇ?
森山:まぁ性格だよ。撮れって言われれば撮るけどさ、でもさ、あんまり興味ないからね。つまんないからパッて撮るじゃない。だからいいもん出来るわけないよ。荒木(経惟)さんなんか上手いよね。やっぱり、綺麗に撮ってあげようとさ。想いがあるから荒木さんは。
中山:森山さんはちょっと、奪うって感覚の方があるからですかね?
森山:うん、スルっていうさ。サッとスルていうの?
中山:なるほど(笑)。
森山:なんとかさ、綺麗に撮ってやろうと思って色々やるんだけどね、どうしてもならないのね。
三人:へぇ〜(笑)。
森山:いやいやほんと(笑)。
(『教えて森山総長』その8に続く)