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『教えて森山総長』その14

中馬:映画で思い出したんですけど、森山さんってお若いときとか、小さい頃って映画館で観られてるんですか?

森山:うん。子供の頃、学校サボっちゃ映画館行ってたもん。

中馬:その当時はやっぱり白黒ですよね?

森山:白黒。ほとんど白黒。

中馬:僕も映画が好きで、昔の映画を観るんですけど、映画の白黒のトーンがありますよね、それが結構森山さんの写真のトーンに似てるなと思う時があるんですよ。ちょっと白が完全に白じゃなくて、ちょっとグレー掛かってたりとか、黒が思いっきりつぶれてたりとか。だから、そう言う森山さんの生きてこられた時代の記憶とかが、写真にやっぱり現われてるのかなぁと、森山さんの写真を拝見して、いつも思っていたんですが。森山:もちろん。だから僕は子供の頃ね、学校サボってさ、観に行くじゃない。当時は昭和20年代だからさ、電気も暗いじゃない、電源もきっと。そう言う暗〜いスクリーンをずっと見てるわけでさ。そう言うのはね、ほんとに俺の写真に影響してるって言うのはわかるね。もちろん意識下にも入ってるから。

中馬:森山さんは、結構映画が好きで何本も観られていたのでは?

森山:映画が好きなんじゃなくて、映画に写ってるイメージが好きだったんだよね。今でも別に映画好きじゃ無いしさ、特にね。ゴットファーザーが一番良いってぐらいの人だから(笑)。映画はそう言うもんだと思ってる人だから。でもね、そう言う子供の頃に観たモノクロ映画の、いろんな風景とか断片は物凄く入ってるよね。それはやっぱ影響してる。それと、デザイナーの助手をしてる頃に、外国雑誌をもう腐るほど見てる。そこに見える様々な外国雑誌のイメージも、それも同じようにどこかに入ってるね。そういうのってやっぱりあるんだよ。

中馬:やっぱり自分の生きてきた段階での想いとかが写真に現われてくるんですね。

森山:あるね。昨日も文芸春秋でちょっとインタビューされて、『桜』の写真をね、「これはどういう風に撮った?」とか言われても困るじゃない、そんなもん(笑)。

梅村:なんのインタビューだったの?それ。

森山:なんか今度、3ページで写真ページ作るらしいの。昭和がくくりのテーマで、いろんな写真家に昭和を撮ってきた人に、そのイメージと、まぁインタビュー。僕は、『犬』『桜』それから『藤圭子』とかね。『桜』について喋るって言っても困るよね。で、喋ったのが、子供の頃に見た映画に出てくる桜。だから実際の小学校や庭の桜じゃなくて、僕の場合はそっちの桜だ から。こう、意識下にあるわけだよね。そう言う話をしたわけなんだけど。それと後ね、昔、ニュース映画とかってあったでしょ?今はあんまり無いけど、映画館で必ずあるじゃない、何本か。朝日ニュース、毎日ニュースとか海外ニュースとか。あれも凄いある。あそこの映像ってのがね。いろいろとね。

梅村:森山さん世代はテレビが無い時代ですからね。

森山:そうだねぇ。

梅村:僕も昭和30年生まれですけど、僕が子供の時はテレビ無かったですから。

森山:30年だったらまだね。もうまもなくあるけどね。

梅村:僕はテレビの無いときを覚えてるんですよ。子供の時に。町の町内とかで映画とかやってたけど。でも完全に森山さん世代はテレビが無い時代だから、それはやっぱり違うんですよね。

森山:うん。

梅村:映像は、映画なんですよね。

森山:そうだよ。だからスクリーンでね、ブラウン管じゃないんだよ。

梅村:今は、テレビがある時代から生まれてるから、映像の最初はテレビなんですよね。それは全然違うんだよね。それは。もちろんテレビも最初は白黒だったし、今はもう生まれた時からカラーでしょ?今だったらカラーテレビでもデジタルカラーだけど、それは全然違うんですよね。

森山:でもそれは、どうしようもない事だよね。その違いはね。

梅村:だから映画なんですよやっぱ、森山さん世代って。

森山:だから、映画好きじゃなくて、映画の画面好きだったね。映画に写る風景。

中山:そこに、映画の内容に行かなくって、画面だったんですね?

森山:結局はそうだね。だって小学校の低学年の頃さ、恋愛映画観てもそんなにねぇ(笑)。それよりもやっぱり全体に写るあのスクリーンの在りようの方が遥かに入るよね。

中山:それを、ピクチャーと言う風に捉えたってことは、森山さんの原型が、すでに…

森山:まぁもう僕の体質みたいなもんだろう、きっとね。生まれてきたね。

中山:それで写真と出会って変換されてるから。事故ですね、森山さんが写真に出会ったのって。

森山:う〜ん…ほんとはコメディアンになりたかったのに…。

中山:それはホントですか(笑)?コメディアンなんですか?

中馬:スタンダップコメディアンですかね?

森山:そうそう、ストリップの間にやるんだよ、コメディアンが昔。まぁ今でもストリップはあるのかもしれないけど。面白かったよねぇ。絶対こういうのになろうと思ってたもん(笑)。

中山:あのぉ、失礼な事お聞きするかもしれませんが、森山さんは不良っていうか、学校に全然行かなかったんですか?

森山:ほとんど行かなかったね。でもちょっとは出て、ですぐ嫌だと思って。

中山:それって凄いですよね、普通なら、学校を好きになっちゃうと思うのですが…

森山:学校なんか好きになれるわけねぇだろ!俺学校も嫌いだったし、先生ってのも嫌いだったしさ、勉強ももちろん嫌だしさ。だから小学校の頃は、(大阪の)豊中だけど、とにかく空き瓶売ってお金もらって映画館。豊中松竹とか行ってさ。今思うと、よく(映画館に)入れたなぁと思うんだよね。俺はむしろそれが不思議でね、だってガキが一人で昼間から映画観に来てんだよ?俺それの方が不思議だよね。でもいっぱい観たよ。

梅村:森山さんのお母さんって先生やってたんでしょ?

森山:やってたねぇ。

梅村:それで、森山さんのお母さんは、「うちの子は学校に毒されなかったから良かった」とか言ったんだよね(笑)。

森山:そうそう(笑)。「あの子はちゃんと勉強しなかったからそれだけが取り柄だ」てね(笑)。

中山:そう言われるのは素晴らしいですね。

森山:そうだよなぁ。俺もさ、普通親だったら取り繕うってかさ、世間体を。でも堂々とね、あの子は勉強しなかったが、それだけが取り柄だって。

梅村:自分が先生なのに(笑)。

森山:まぁそう言われてもなぁってのもあるけど(笑)。だから根っからの野良なんだよ。やっぱり一人が好きだったしね、友達あんまりいなかったし、作るのも嫌だったし。みんなでわーわー騒ぐの嫌だったなぁ。

中山:妥協って言うのか、(みんなに)合わせるのは鼻から意識してなかったんですか?

森山:なかったと思うなぁ。まったくなかったのかどうかはさ、わかんないけど。でもまぁ迎合して友達になる事はないよね。やっぱつるむのが嫌だったんだろうなぁ、子供の頃からね。誰かとつるむってのが。だから家庭を持てば、家庭から逃げたがるし(笑)。だったら持たなければいいのにねぇ?持たれた方はいい迷惑だよ。ほんと思うよ(笑)。

(『教えて森山総長』その15に続く)

更新日:2010年4月28日