
森山:それはもちろんそう言う意味ではね。
梅村:そうでしょ?そういうとこおかしいですよね、そういう風に成立してるのにさ、日本において。どいう事なんかなぁ…。
森山:いや向こうにはさ、コレクターがいっぱい居るからね、お金持ってるコレクターが。
梅村:そんなにコレクターが居るのに、(写真家が)育ってもいいのにね。
森山:いやでもやっぱりさ、そういうアートシーンなりフォトシーンがさ、やっぱり操作的にやってんのよ。
梅村:でしょね、たぶんね。逆にそれがよくないのかもしれないですね。
森山:そうだよ。だからそういう操作の中に、ワイルドな奴が入ってこれないっていうの。
梅村:かもしれないですよね。
森山:だって今はもう、世界中そういう風なひとつのマーケットになってるよね。日本も多少、その中に入ってるけどね。日本人は買わないからね。
梅村:買わないですよねぇ。
森山:うん、なんだかんだ言って日本人買わないもん。日本人の写真買って行くのは結局外国人だもん。
ー省略ー
梅村:スナップ撮ってて、撮ったら森山さんみたいになっちゃったなぁとか思った時無いですか?
中山:ありますね。ありますけど、それはスナップだとやっぱり森山さんってイメージが(染み付いてて)。
梅村:どう撮っても森山さんみたいになっちゃうって感じ?
森山:それはないよぉ。
中山:狙ってしまうっていうか、森山さんの写真を見てそれをやっちゃう自分が居て…
梅村:居るんすか?やっぱり。
中山:はい。
梅村:そうなのかなぁ。
中山:そうですね。やっぱり影響ですね。
梅村:要するに、深い所で入っちゃってるわけ?
中山:影響されてて、っぽくなって、森山さん(的)と言われるんだろなと。
森山:やっぱり感性のどこかにさ。僕だってやっぱりほんとに最初の頃はさ、とてもウィリアム・クライン、東松照明が入ってた。あ、これ東松照明だ!と思ったりさ。
梅村:そうなんすかやっぱ。
森山:うん。
中山:でもやっぱりそれをずっとやり続けると、自分の視点になってくるのですか?
森山:だね。自分の癖、つまり病気だね。その癖が自分で見えてくるよね。
梅村:森山さん的には、いつ抜けた感じがしたの?
森山:『にっぽん劇場写真帳』のあたりから、あぁなんかこのあたりが俺の…なんかどこか…なんて言うのかなぁ、床かなぁと思ったよね。それからポスターとかをパシャパシャ複写するじゃない。あれもやっぱりやってる自分を見て、『自分はこう言う所がある』のだなぁとかね。まぁ少しづつ撮ってると思い当たるって言うの?「そうかそうか、もしかしたらこれだな俺は」みたいな。
梅村:嫌だよね、なんか撮ってても森山さんが手のひらでまわってるって思うと。
中山:まぁ〜(笑)
梅村:孫悟空みたいな。
森山:でもさ、パシャパシャ撮ってれば自分が出てくるよね、絶対に。
中山:僕このあいだ、評論家の人に写真を見てもらったんですけど、「森山さんみたいだね」とか言われた時があって。
梅村:言われた?
中山:言われましたね。森山さんの写真は森山さんでいいから、もっと違うもの見つけないとってアドバイスを言われた。
梅村:じゃあ「これ森山大道です」て出したらどう言うか聞いてみたいね。
森山:まぁでもさっき言った自分の写真は難しいかもしれないけど、壊していくって言うの?分解して行くっていうのはそう言う事だから。
中山:ストリートスナップをやると、すぐに「あぁ、森山大道かぁ」ってなっちゃってるんすかね。
梅村:そこの枠から出れないってこと?
中山:いや、それはもちろん枠を越えなきゃ自分が見つからないんですけど。
梅村:でもさ、『これはやっぱ自分だなぁ』てのはあるのでしょ?
中山:もちろんあるんですけども、でもやっぱり言われるんですよね。森山大道風だねって。
森山:迷惑だよなぁ〜、迷惑な話よなぁ。
(『教えて森山総長』その13に続く)